【自然画家 絵美 個展】渾身の作品に込められた祈り

本日(2024年3月2日)、自然画家 絵美さんの個展を観るために道後に行ってきました。
道後の温泉街から少し離れたところにある「道後温泉 旅亭 うめ乃や」の数寄屋造りの外観はまさに「隠れ宿」と呼ぶに相応しい趣きがあります。創業してから80年という月日の中で数多くの著名な文化人の方たちが美しい庭園や鳥のさえずりに心を癒され、贅を尽くした料理、きめ細やかなもてなしを楽しみ、名湯を満喫したのでしょう。

受付を済ませてまず印象的だったのはプロジェクターで投影されたメイキングの動画。


暗い森の中で全身白い服を纏った絵美さんが半畳ほどの板に鮮紅色のアクリル絵の具を絞り出し指で延ばし掌で練り込む、掌から念を込めているような気迫。真っ赤に染まった両の掌を呆然と見ているかのようなカット。本当に全身のエネルギーを絵の中に注いでいるんだ・・・

絵美さんの描く絵には独特のパワーのようなものは感じてはいましたが、森の中に満ちた自然の「気」を自らの身体に取り込み巫女のように絵の中に封じ込める様を見て少し体が震えました。
アトリエの中での制作でもそのように描いていましたから、作品を描くために気力、体力を限界まで消耗しているのだと思います。今回、かなりの点数の新作が発表されていましたからどれだけの時間、身を削るような作業に費やしていたのかと心配になります。

細かい所まで意匠を凝らした数寄屋造りの和室の空間に、絵美さんの作品は独特の存在感を放っていました。照明や周囲の明るさ、色調の統一感など十分に考え尽くし試行錯誤を繰り返して完成したのだと思います。調和と緊張感という相反するものが生み出す妙。それは書店で積み重ねた画集の上にそっと檸檬を置くくらいの期待と興奮があったことでしょう。

展示を堪能したあとの甘いお汁粉は最高です。内面まで美しく絵付けされた器でいただくお汁粉は本当に甘くてやさしくて溜息が出ます。
また来たい、と思うすばらしい個展でした。
そしていつか夫婦で自分たちへのご褒美として泊まりたいと思う旅亭でした。


※ 会場・時間については下記を参照してください。

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