松山市はとても情緒的な街だ。路面電車はヨーロッパから輸入した最先端の車両もあれば、昔の教室の床のような板張りの古い電車も現役で走っている。使えるものであれば直して長く使うという考えが街全体に浸透しているのだ。これはこれで素晴らしい。役所などの壁には「質実剛健」という筆書きの文字が貼られている。華美なもの、装飾的なものはあまり好まれないようだ。これはやはり城下町、つまり武家の思想が美徳とされているのだろう。そう思って街の中の建造物を見渡すと、銀行などの建築デザインもどっしりとした石造りであまり装飾的なものは施されていない。要塞のような素っ気ない建物ばかりだ。ポストモダンやラディカル、ポップというような都市空間の要素はほとんど見ることができない。
だから街のどこにでも普段着で出かけられる。夏は甚平で十分だ。それはそれで良いとも思うのだが、若者は退屈してしまうだろう。
無機質でモノトーンの空間にLEDのひんやりした照明が規則的に並んだ長い通路。歩いている人を見ると、男性も女性も身体に完全にフィットしたスーツにかっちり身を包み、背筋を伸ばしてまっすぐ速足で歩いていく・・・というようなハレの場が無いのだ。
しっかりメイクして、服もあれこれ考えてこれと決めてでかけるような少し緊張感のあるハレの場は、都市の活力を生む上でも若者の人口流出を食い止める上でも重要だ。
歴史と未来感を調和させた都市づくりを期待したい。
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